その敵の殺害方法は、すばやく、効率的で、残忍である。
犠牲者たちは、目をくらます頭痛、うなぎ昇りの熱、そして急激な大出血で苦しんだあと、最後に、彼らの肺は文字どおり溶解してしまう。
死は苦痛からの慈悲深い解放となる。
その敵はまるで毒ガスを放ったかのように思えたが、実際には、ある殺人ウイルスが竜巻のようにその部隊を吹き抜けて、あとに荒廃を残しただけなのである。
アメリカ陸軍の責任者たちは、短時間の実地踏査をしただけで、この状況といっさいの関わりをもつべきではないことを確信する。
彼らは証拠を消すためにその谷に爆弾を投下し、この事件全体を隠滅する。
しかし三0年後同じウイルスが再び彼らの目のまえに現れる、今度はアメリカ合衆国のなかである。
モタバヴァレーウイルスは、一見まったく無害で愛らしい愛玩用のサルに運ばれてサンフランシスコに到着する。
アフリカの降雨林で捕獲されてアメリカの港湾官吏に贈られるこの小さな動物は、市場で高い値段で売られるために、検疫期間を回避するための不法な通関許可を得るには十分な賄賂なのである。
こうしてこの殺人ウイルスはこの国に足がかりを得る。
このサルはウイルスで感染した唾液を主人に吐きかけ、買手となるかもしれない人間をウイルスで汚染されたツメで引っ掻いたあと、カリフォルニアの松林のなかに解き放たれる。
そうこうするうちに、このウイルスは、二四時間という短い潜伏期にもかかわらず、犠牲者の体内にいるうちに、遠くへ、そして広い地域を旅行する。
このウイルスは飛行機でボストンにたどり着き、そこでキスを通して配偶者に感染し、最初の犠牲者をつくる。
このウイルスは咳による唾の飛沫を通じて映画館の観客全体に感染する。
ここからさき、私たちが目にするものは、野火のように広がり、恐ろしい苦痛をもたらす致死率一00パーセントのウイルスの大流行である。
これに類する流行病はおもしろいスリラーに必要なあらゆる要素を備えている。
サスペンス、パニック、災厄、そして最後にいい気分で終わる。
いま述べた話は一九九五年に封切りされた映画『アウトブレイク』の導入部です。
二人の医師を演じる俳優D・HとR・Rは、急速に展開する危機にうまく対処して、折よく治療法を見つけることに成功し、人類の全滅を食い止める。
このような世界の終末を扱ったシナリオは人に十分恐怖を抱かせるが、真に恐ろしいのはこの映画が実際に起こった事実、エボラウイルスの最初の発生をもとにしていることである。
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